様々な分野で地元のみならず、全国、時に世界を股にかけるスペシャリストが集う街・生駒。今回ご紹介するのはチョコレートのスペシャリスト・寿円早綾(じゅえん さや)さん。
生駒駅近くで小さなお菓子教室「Petit Maruju」でお菓子作りを教える傍ら、ショコラティエとして活躍されています。
みんなが大好きなお菓子・チョコレートに魅せられ、熱い情熱を注ぐ一人の女性をご紹介します!
Contents
生駒でお菓子教室を開こうと思ったきっかけとは?
もともとは生駒山の反対側で育ち、およそ10年前に家族で奈良県に引っ越して来た寿円さん。そんな寿円さんが、生駒でお菓子教室を開くに至ったきっかけについて聞いてみました。
いこまつうしん− まず、この場所でやろうと思ったきっかけについてお伺いしたいのですが、どんなきっかけだったんでしょうか?
寿円さん− いろんな選択肢を考えたのですが、アットホームなところでできる場所がいいなと思っていました。実は、Petit Marujuという名前にしたのですが、Marujuには「ゆとり」という意味があるんです。ここに来たら、そんな空間にしたいなと思ったので生駒でやろうと思ったんです。
いこまつうしん− 来られている方は生駒の人が多いんですか?
寿円さん− 生駒の方もいらっしゃいますが、大阪や京都、遠いところでは神戸から、いろんなところから来ていただいていますね。もともとは告知とかもせずひっそりとやっていたので、地元の人には逆に知られていなかったかもしれませんね。
いこまつうしん− 地元の方に知られるきっかけって何かあったのでしょうか?
寿円さん− 去年秋に生駒で開催されたPechaKuchaNightに登壇させてもらいまして。これをきっかけに地元の方が知っていただき、様々な方とお付き合いをさせていただくようになったんです。
カフェをオープンしたいと思っていた学生時代
今でこそチョコレート作りに魅了されている寿円さん。小さい頃からお菓子作りこそしていたものの、食の道とは違う道に進もうと志していたのだとか。今に至るまでの道のりについて聞いてみました。
「カフェをオープンしたい」その思いで突き進んだ
いこまつうしん− そもそものことをお伺いしますが、今のようにお菓子作りに昔から憧れていてこのような教室を開いたのでしょうか?
寿円さん− お菓子は小さい頃から作ってはいましたが、人に食べてもらったりするために作ったりはしていませんでしたね。食べてもらうなんて畏れ多いというか。むしろ、食の道には進みたくないなと思っていたくらいでした(笑)
いこまつうしん− それは意外ですね。ということは、お菓子作りとは違う道に進んだということですか?
寿円さん− いつかカフェをしたいと思っていたので、進路を決めるときも建築やアパレルなどデザインの勉強をしていました。そのうちに、VMDが面白いなと思って、最初はアパレル業界で仕事をしていました。
いこまつうしん− お菓子作りとは全く違う道に進んでいたんですね。どうして「進みたくない」と思っていた食への道に進んでいったのでしょうか?
寿円さん− いつかカフェをしたいという夢がありましたが、食の専攻ではなく、内装から勉強したいと建築、インテリア、アパレルの専攻をしました。勉強する中でVMDに興味を持ちアパレル業界に就職しました。そろそろ手に職を持ちたい、そう思った時に料理教室で声を掛けてもらい、料理教室の先生をしていました。
「いつかカフェをオープンしたい」そんな思いで学び、働きスキルを上げていった寿円さん。料理教室の講師として働きはじめたことが、今のお菓子作りへの扉を少しづつ開いていくこととなります。
「答え合わせをするため」通った製菓学校、そこでの出会いとは?
料理教室の先生として、人々に料理を教える立場となった寿円さん。教えることで、「なぜ、そうなるのか」を伝えられるようにするため、仕事の傍ら製菓学校の門を叩きます。そこで巡り合った出会いとは?
いこまつうしん- 製菓学校にはどういったきっかけで通うことになったんですか?
寿円さん- 料理教室で講師をはじめたときに、作ると教えるの違いに悩みました。今まで当たり前だとおもっていたことを説明すること、なぜ?がわからないと悩んだ結果、専門学校で学ぶことにしました。
いこまつうしん− 確かに、感覚でできてしまっているが故に説明ができないってこと、よくありますよね。
寿円さん− 実はこれ、職人さんとかではよくある話なんですよね。そこで、答え合わせをするために通ってみようと。ところが、入っていきなり「カフェとか目指す人はもう諦めなさい」って言われて。大人だから言っている意味もそれなりに理解できたし、生半可なことじゃないよねと。
いこまつうしん− なかなか厳しいことを言うもんですね。笑
寿円さん− でも、文化祭とかで自分たちが考えて作った姿が一瞬で売れる姿、食べて喜んでいる姿を見て「やっぱりこの仕事をしたい」と思ったんですよ。お金とかじゃないと。そんな思いで通っていましたね(笑)
料理を教える身として、どうやって教えたらいいのか。そして、料理を学びに行ったところ突如突きつけられた抱き続けていた夢の厳しさ。それでも、学び続けた寿円さんにひとつの出会いがやって来ます。
元々はそんなにチョコレートが好きじゃなかった?!
嫌いという人を聞いたことがないくらい、誰からも愛されているチョコレート。100人中97人が好きと答えるというくらい世代や性別を問わず愛されているのだそうです。
そんなお菓子にも関わらず、実は寿円さん、もともとチョコレートが好きではなかったのだとか。チョコレートに魅せられたきっかけについて聞いてみました。
チョコレートに魅せられたきっかけとは?
いこまつうしん− チョコレートについて聞きたいと思うのですが、ここまでチョコレートに魅せられたきっかけって何だったんでしょうか?
寿円さん− 実は、もともとそんなにチョコレートが好きじゃなかったんですよ。製菓学校に行っていた時にチョコレートの作り方を教えてもらって、美味しいなって思ったんですよね。勉強しているうちに虜になってきて、学校で学ぶだけでは足りないと思って、東京まで通いに行ったんですよね(笑)
いこまつうしん− 東京まで行っていたんですか!すごい行動力ですね。ちなみに、チョコレートの魅力ってどんなところだと思いますか?
寿円さん− 人を幸せにできることですね。これはもう確信しています!あと、感情が素直に出るところでしょうか。感情が良くない時に作っても、いいものができない。それくらい繊細な食べ物なんです(笑)
いこまつうしん− 感情が出る、ですか。チョコレートってまるで生き物のように感情が詰め込まれた食べ物なんですね!
寿円さん− あと、少しの量で満足することもできるし、世界中を旅しているかのような気分になることもできると思っています。五感全てを刺激して楽しんでいただければと思っています。
いこまつうしん− まるで、チョコレートには世の森羅万象の全てが詰め込まれていると言ってもいいくらい奥が深い世界ですね!
チョコレートの楽しみ方とは?
チョコレートの奥深さに魅せられた寿円さん。そんな誰よりもチョコレートと向き合い、試行錯誤を繰り返しているチョコレート作りのスペシャリストに楽しみ方を聞いてみました!
いこまつうしん− チョコレートを味わう時の楽しみ方ってありますか?
寿円さん− 五感を刺激しながら食べて欲しいですね。ただ美味しかった、ではなく転がしたり、様々な食べ方で味わって食べてみると楽しめると思いますね。ちなみに。チョコレートの原料のカカオって、「神が食べるもの」と言うところから来ているんですね。
いこまつうしん− お酒を味わって飲むように、チョコレートもまさに嗜好品としての楽しむことができるものなんですね!
寿円さん− まさに嗜好品ですね。ちなみに、もともと薬剤師が持っているもので、薬として用いられていたんですが次第に甘いものや様々な味わいのものが生まれていったんですよね。食べ方の違いでも味が変わってくるし、本当に深いし、感情も動かされる食べ物だと思いますね!
いこまつうしん− こことは別に、改めて記事にしたいくらい奥が深いですね(笑)ちなみに、チョコレートの奥深さを極めたと思っていますか?
寿円さん− まだまだそっぽを向いているし、一生そっぽを向き続けているんじゃないかなと思います。笑 私はいつも「チョコレートと友達になりたい」って言っているんですが、チョコレートは自分の方をきっと向いてくれないだろう。そうだとはわかっているけど追い続けていると思いますね(笑)
世界を旅した気分になれると語るチョコレート。ワインや他のものと組み合わせたコラボレーションイベントなども展開していくのだそう。今後、様々な人たちとのコラボレーションを通じて、チョコレートの奥深さが何次元にも拡大していくかも?!
さいごに…お菓子教室にとどまらず
いこまつうしん− 今、やってみたいことってありますか?
寿円さん− 今を全力で生きる、ですね。“すきなことをまっすぐと”すきなことを志事に出来ていることに感謝して全力でむきあい、今を生きるです。
いこまつうしん− 確かに、そう言う気持ちって大切ですよね。他に何か感じていることってありますか?
寿円さん− 自分が食の道に進むと思っていませんでした。私は石橋を渡る前にたたいてかち渡るタイプですが、いまの私のしごとができていることはいろんな流れでこの道に繋がりました。出来るからやるのではなく、やるから出来る。その言葉を元に常にチャレンジをし続けていきたいと思います。 私の周りには素晴らしい方ばかりで、仕事のかたわら、趣味のレベルが趣味ではない。そんな方々の何かのきっかけになればとワークショップをしていただいたり…そんなこともちょこちょこしています。
いこまつうしん− 何かをしたい、そう思う人にとって表現する場だったり、ここをきっかけに羽ばたくことができたり…。この教室がひとつのコミュニティのようなのかもしれないですね。
寿円さん− そういうところを目指していきたいですね!
料理教室、お菓子を作る場所だけではなく、ひとりひとりが何かを表現したり、自分自身の立ち位置を整理する場としてもここが役立てばいいなと語る寿円さん。
お菓子作りを行う上でのスタンスとして「ティーチング」ではなく「コーチング」しながら共に作っていきたい。そう語る彼女の優しさに包まれた人柄こそ、人々を笑顔にし、魅了させる。
他のショコラティエにはない、チョコレートを美味しくさせる「ラストピース」なのかもしれません。